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ザ・ウォール

May 11, 2018(SAW-SEKI)

これは戦争映画か、密室スリラーか?

 原題:The Wall /2007年、アメリカ映画

 

 

 監督は、『ボーン・アイデンティティ』、『ボーン・スプレマシー』、『Mr. & Mrs. スミス』、『オール・ニード・イズ・キル』など、アクション映画を得意とするダグ・リーマン。今作では派手なアクションは見られませんが、鑑賞後に、自分は今どのジャンルの映画を観たんだ? と不思議な思いを感じる作品となっています。

 主演は、『キック・アス』シリーズでお馴染み、『ノクターナル・アニマルズ』で、ゴールデングローブ助演男優賞を受賞したアーロン・テイラー=ジョンソン。本作は、ほぼこの俳優の一人芝居でありながらも、鬼気迫る見事な演技を披露してくれます。

 

 分類でいえば、戦争映画・・・・・・しかし、その内容は良質のスリラーともでもいえます。開放的な砂漠が舞台なのに、窮屈な部屋に閉じ込められたような閉鎖感を醸す不思議な作品でした。

​どこまでが罠?

 舞台は、イラク戦争が終わりに近づいている2007年のイラクの砂漠地帯。パイプラインの建設現場。アメリカ軍のスナイパー、アイザックとマシューズが派遣されます。

 

 現場に到着した二人は、すでに22時間以上もの間、敵の様子をうかがっています。現場にはアメリカ兵やパイプラインの作業員の死体が何体も転がっている状態。そして、その全員はほぼ頭を撃ち抜かれています。

 

 とんでもない技術をもったスナイパーが潜んでいる。しかし、動きのない状態に業を煮やしたマシューズは、敵はもういないと断言し、遺体から無線機を回収しようと狙撃現場に向かいます。

 

 しかし、マシューズは敵の銃撃に遭いその場に崩れます。アイザックはマシューズを救出するために、その元へ向かいますが、あえなく脚に銃撃を受けます。

 

 命からがら石で組んだ壁の裏に逃げますが、敵のスナイパーにより、無線機も水筒も撃ち抜かれてしまいます。スナイパーは、相当腕の立つ者に違いありません。

 

 すると、トランシーバーからアメリカ軍からの声が届きます。安堵するアイザック。しかし、トランシーバーは近くにいなければ送受信することができない。そして、その会話は軍の手順を踏んだものではありません。

 

 そう、これは敵スナイパーの罠。そして、脚を負傷したアイザックと姿を見せないスナイパーとの頭脳戦が始まります。その声の主は、アメリカ軍が恐れている死に神スナイパー“ジューバ”らしい。

 

 ここからはアイザック演じるアーロン・テイラー=ジョンソンの一人芝居が続くのですが、密室ではないのにまるで密室スリラーを見ているような感覚。ライアン・レイノルズ主演の『リミット』を彷彿させます。

 

 姿を見せないスナイパーの映画は、『パニック・イン・スタジアム』、『フォーン・ブース』などがあります。しかし、ラストで犯人の姿を映すことで、事件の解決を観客に知らしめる効果を与えていましたが、本作では、最後まで犯人(スナイパー)の姿を見せることはありません。

 

 そして、ラストはで、“ジューバ”はここまで考えて行動していたのか、と想像を越えたどんでん返しが待ち受けています。興行成績は今ひとつだったようですが、個人的にはオススメの映画です。

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