空軍大戦略

Aug 26, 2018(SAW-SEKI)

質の高い作品!

◎感想文

 

 まずは、本作は『質の高い映画』である! とひと言。

 

 欧米映画でよくありがちな、《ドイツ》=《悪》という表現は少なく、ドイツ人も一人間であるといったフェアな表現がされており、マシーンのように上から命令を成し遂げるイメージのドイツ兵も、しっかりと人間臭く描かれているのも好感が持てます。

 

 ただ、直接日本に影響のない戦いだったので、日本人には理解しにくいストーリーになっているかも知れません。受験生など、世界史や欧州地理を受けている人にはいい勉強題材となっていると思います。この作品を鑑賞すると、なぜドイツ軍がイギリスを侵略できなかったかの理由も分かります。史料的にも世界史の先生は教材として学生に観賞させるといいかも知れません。

 

 また、ちょっと第二次世界大戦の欧州の背景を勉強し、ノーラン監督の『ダンケルク』を観た後に鑑賞することがオススメ。内容は、2017年ヒットしたノーラン監督の『ダンケルク』のその後的な内容になっています。そうなんです。ダンケルクで40万人の人が救出されて、映画はそこで終わっても実際の戦争は続いているのです。

 

 1940年のダンケルクでのダイナモ作戦直後、一瞬ですがダンケルクの浜辺の悲惨な様子が映されます。わずかな数秒のシーンなのですが、リアリティのある戦場の悲惨さを描いています。人間は映っていないのですが、思わず息を飲みます。

 

 それにしても、相変わらず、昔も今も、邦題の付け方がダサいですね。原題Battle of Britainの方が100倍カッコいいし、歴史的な背景も理解できるはず。センスのなさのせいで、興行収入が落ち込んでいる現実を配給会社は直視して欲しいものです。

 

 本作は、戦争を背景にした叙情的群像劇となっているので、唯一の主人公が存在しているわけではありません。多くの登場人物が戦争中という特殊な環境下で翻弄されていく姿を描き、言い換えれば皆が主人公とも言えます。

 

 目を惹いたのが、スピルバーグ監督の『ジョーズ』で小汚いサメ釣り漁師を演じたロバート・ショウが、金髪で白いタートルネック姿……カッコいい。

 

 スピルバーグの『プライベートライアン』以降、戦争映画は悲惨さのリアリティを追求する傾向にありますが、本作は、いわゆるグロいシーンはありません。ただ、リアリティという意味では、実機を使用した空中戦など、迫力は満点です。

 

 そして、本作のリアリティは2種類あります。とにかく迫力あるリアリティと妙に地味だけど納得するリアリティ

 

1.迫力あるリアリティ

・とにかく実機をふんだんに使用した撮影は迫力満点

・太陽の逆光を利用した空中戦術など、パイロット目線で描かれているので、思わずコワっと感じます。

・空軍待機所の爆撃シーンも実機が爆破したり、爆破と演者の演技のタイミングも「あぶね!」と思わず声が出ます。製作年1969年なので、もちろんCGなどもありません。

・雲の上での空中バトルは圧巻。いったいどれだけの数の実機を使用しているのか!

・撃墜され地面や海面に墜落する戦闘機にも実機を使用しているので、思わず「オイ、オイ」と観ているこっちが心配してしまいます。

・ベルリンの町を奇襲され、ぶち切れたドイツ軍が、ロンドンを壊滅することを宣言。ここでヒトラーが登場するも、地味に顔が映らない。上手い演出、そして、ヒトラーの言葉に洗脳されていくドイツの民衆が揃って声を挙げる、コワいシーン

 

 

2.地味なリアリティ

・イギリスとドイツによる、報道の過熱合戦

「15機しか撃墜されない」vs「通算で300機撃墜した」など誇張した表現で国民の士気を高めようとする両国報道機関

・戦場という職場における男女の扱い方の格差

・飛行士不足で、「みな疲れて休暇が足りない」ので、英語の通じないチェコやポーランドといった外国人までもを駆り出す始末。しかし、英語が通じないので、悲劇的な結果になることも……まるで、今の日本

・敵機を爆撃しても、味方の援護のおかげだということで、成果は3分の1など、思わずブラック企業か!とツッコみしたくなるセリフ……現代の日本かよ!

・そして、木の駒をテーブルゲームのように移動させる式の、今では考えられないアナログな戦略司令室。

・パラシュートで着陸するも、降りた場所が、海はまだしも、農作業している畑だったり、ガラス張りの温室の上だったり……っていうか、頭上であんなたくさんの戦闘機が空中戦を行っているのに、農作業はちゃんと行っているのですね。

・攻撃された戦闘機から負傷者を救出するシーンが人力だったり

・疲れきって命辛々空から帰ってきたパイロットたちが待機所に戻ってくるも、電話のベルの音で恐怖と緊張で、吐き気を催すなど

 等々、こういう地味なリアリティ・シーンのおかげでグロいシーンはなくとも戦争の悲惨さを伝えてくれています。

 

 

 そして、圧巻なラストの激しい空中バトルには、なんと効果音がいっさいありません。作曲ウォルトンのクラシックが流れる中、たくさんの実機がスクリーン狭しと舞いながら空中バトル。火を噴き、煙を上げ、クルクルと回転しながら墜落する戦闘機など、なぜかクラシックの音楽とともに叙情的に描かれています。

 

 エンディングでは、澄み切った青空が映しだされるも、心がスッキリしなません。戦争という重いテーマがその原因なのでしょう。

 

 それにしても、戦後わずか20年余り、イギリス国民は、ドイツ軍の実機爆撃が飛んでる姿をどのような気持ちで見ていたのでしょう?

◎背景

 1969年製作。イギリス映画。

 配給:ユナイテッド・アーティスツ

 日本での興行収入 2億500万円

 原題 “Battle of Britain”

 第二次世界大戦中、1940年6月に起きたフランス、ダンケルクでの救出作戦(=ダイナモ作戦)直後、空を制しようとするドイツ軍によるイギリス空軍基地空爆をきっかけに、ロンドン市街地、ベルリン市街地への戦禍拡大の背景とドイツ軍の撤退を描いた作品。

 

 

◎STAFF

 監督は初代007シリーズのガイ・ハミルトン

 

◎CAST

 マイケル・ケイン

 ロバート・ショウ

 ローレンス・オリヴィエ

 

◎STORY

 ダンケルクの英国軍撤退後、空を制するためイギリスの制空権を奪取しようとするドイツ軍は、次々にイギリス空軍基地を空爆。

 

 ドイツ空軍2500機に対し、イギリス空軍はわずか600機、しかも慢性的なパイロット不足。イギリスは、レーダー網を駆使し、なんとか持ちこたえています。

 

 しかし、8月のある夜、1機のドイツ軍の爆撃機が無許可でロンドン市街を空爆することで戦局が一変、一気に拡大します。イギリスは報復として夜間ベルリンに奇襲。これに対して、ドイツ軍はロンドンへの無差別空爆を開始。

 

 戦況は英国にとって痛手でしたが、実はこれはドイツの大誤算だったのです。イギリスは、これを逆手にとり、空軍基地の攻撃が手薄になることで、息を吹き返すきっかけにもなったのです。これで、ドイツ軍に対して反撃することになります。

 

 イギリス軍の怒濤の反撃を受け、ドイツ軍はイギリスの制空権を諦め、撤退。よって、ドイツのイギリス制圧免れることになりました。

 

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